閉店後の、私だけの秘密の時間

お店の明かりを落として、椅子を全部カウンターにあげて、最後に自分のためにグラスに注ぐ一杯のお酒。これがね、スナックのママになってから、密かに一番楽しみにしてた時間なんよ。全部の片付けが終わって、静かになった店内で、一人でゆっくり飲むのが、もう、たまらなく美味しくて。
「あー、今日もお疲れ様でした〜」って、誰にも聞かれてないのに、つい声が出ちゃう。カウンターに肘をついて、ぼーっとしながら、今日あった色んなことを思い返すんや。お客さんとの会話で、思わず笑っちゃったこととか、「あの人、今日ちょっと元気なさそうだったな、大丈夫かな?」って心配になったり。あとは、「明日はどんなお通しにしようかな?」って、メニューを頭の中で考えたり。
ほんと、何でもないようなことなんやけど、それがね、一人で飲むお酒に、また格別な味を添えてくれるんよ。誰にも見せない、ママだけの時間。これは、スナックをやってなかったら、絶対知ることのなかった、私だけの特別な楽しみ方なんやなって思う。
夜も更けて、街の喧騒も遠くなって、お店の中だけが、しん、と静まり返ってる。そんな中で飲むお酒って、なんかこう、一日頑張った自分へのご褒美みたいな感じがして、じんわりと心に染み渡るんよ。お客さんがいる時は、どうしても周りに気を配って、笑顔でいることが一番やけど、この時間だけは、全部肩の力を抜いて、素の自分でいられる。
「このお酒、ほんま美味しいな」って、グラスを傾けながら、ふと呟いたり。今日あった楽しい出来事を思い出して、ニヤニヤしたり。逆に、ちょっとうまくいかなかったことがあって、ため息をついたり。そういう、ありのままの感情を、この静かな空間で、お酒と一緒に溶かしていく感じ。
スナックって、色んな人が来て、色んな話をしてくれる場所やん。だから、私も自然と、色んな人の話に耳を傾けるのが好きになった。元気いっぱいの人も、ちょっと疲れてる人も、それぞれの人生を、それぞれのペースで歩んでるんやなって、お客さんの顔を見てると、しみじみ感じさせられる。
そして、閉店後、一人で飲むこの一杯は、そんな一日の締めくくりとして、私にとって、すごく大切な時間なんや。今日一日の出来事を整理して、明日への活力を養う、そんな感じ。誰かに見せるためでもなく、誰かのために気張るわけでもない、ただ、私自身のために、この一杯を味わう。
これが、スナックのママという仕事をしていて、一番「私らしい」って思える瞬間かもしれない。お店の中は、まだ温かい灯りが灯っていて、ほんのり甘いお酒の香りが漂っている。そんな穏やかな空間で、今日という日を噛み締める。
明日もまた、新しい出会いや、色んな物語が、このお店に訪れるんやろうなって思うと、ちょっとワクワクする。でも、まずは、この静かな夜に、自分自身と向き合う時間。これがあるから、また明日も、笑顔でお客さんを迎えられるんやなって、そう思えるんや。この、閉店後の、誰にも邪魔されない、私だけの秘密の時間。これからも、大切にしていきたいな、って思うんや。😊
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