雨粒と、静かな夜の訪れ

空から雨粒がぽつぽつと窓を伝い始めた。ああ、もうそんな季節かとしみじみ思う。雨の日って、どうしてもお客さんの足が遠のきがちなんだけど、不思議と私はこの時期が嫌いじゃないんだ。むしろ、ちょっと楽しみだったりする。
だって、雨の夜にわざわざお店に来てくれる人って、なんだか特別じゃない? びしょ濡れの傘を畳みながら「やっぱり、ここが一番落ち着くんだよな」なんて言ってくれる常連さん。それが、いつも来てくれる中村さん。
カウンターに座って、温かいコーヒー焼酎をちびちびやりながら、窓の外をぼーっと眺めている横顔が、なんだか絵みたいだった。雨に濡れた街の灯りが、ぼんやりと滲んで、いつもよりちょっとだけ切ないような、でも、すごく穏やかな雰囲気。
もちろん、ワイワイ賑やかな夜も大好き。みんなで笑って、歌って、あっという間に時間が過ぎていくような、あのエネルギーに満ちた空間も、このお店の顔だなって思う。でも、こういう静かな夜も、また違った「スナック」の顔なんだよね。
雨音をBGMに、ゆったりと流れる時間。普段なら、あっという間に過ぎてしまう夜が、なんだかちょっぴりスローモーションみたいに感じる。グラスを傾ける音、かちゃり、と氷が触れる音、それから、店主が淹れてくれるコーヒー焼酎の、ふわっと漂う香り。そんなささやかな音や香りが、いつもより鮮明に感じられて、心がすーっと落ち着いていくのがわかる。
中村さんが、ふいに「この雨音、なんか落ち着くなぁ」って呟いた。うんうん、わかるよ、その気持ち。まるで、世界から切り離されたみたいな、秘密の隠れ家みたいな感覚。雨に濡れた外の世界とは、全く違う時間が流れているような。
「この前さ、テレビでやってたんだけど、雨の日の過ごし方で、その人の性格が出るらしいよ」なんて、他愛もない話もした。中村さんは、へぇ、って面白そうに聞いてくれた。なんだか、こういう何でもない会話が、すごく心地よかったりするんだよね。
雨の日は、無理して気を張らなくてもいい。いつもより、ちょっぴり肩の力を抜いて、ありのままの自分でいられる気がする。それに、雨だからこそ、こうしてゆっくり話せる時間が増えるんだ。
「また、雨の日に来ますよ」って、中村さんは笑って帰っていった。もちろん、晴れの日も、風の日も、いつでも大歓迎なんだけど、雨の日にそんな風に言ってもらえると、なんだか嬉しい。
この、雨粒が窓を伝う静かな夜。賑やかな喧騒とは違う、温かい灯りが灯る、この場所。私にとって、スナックっていうのは、ただお酒を飲むだけの場所じゃなくて、こういう、ほっと一息つける、心安らぐ時間を与えてくれる、そんな大切な場所なんだなぁって、改めて思った夜だった。また明日も、どんな夜が来るのかな。楽しみだな。😊
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