カウンター越しの「ありがとう」に救われた夜

昔から、自分ってあんまり人の話を聞くのが得意じゃないと思ってたんだよね。どちらかというと、自分からどんどん話していくタイプの人を羨ましいなって思ってた。だから、バーとかスナックで働くって、正直ちょっと不安もあったんだ。だって、お客さんとの会話って、すごく大事じゃない?
でも、実際にカウンターに立ってみると、全然違ったんだよね。もちろん、楽しいおしゃべりもするんだけど、何よりも「聞く」ことの重要性をひしひしと感じるようになったの。お客さんって、色んな話を聞いてほしいんだなって。仕事のこと、家庭のこと、昔の思い出、ちょっとした愚痴まで。それを、ただうんうんと相槌を打ちながら聞いているだけで、お客さんの顔がすっと軽くなるのがわかるんだ。
「あー、そんなことあったんですね」「それは大変でしたね」とか、当たり前の言葉しか返せないんだけど、それでも「ありがとう、聞いてもらえてスッキリしたよ」って言ってもらえた時の嬉しさといったら!あの瞬間、自分の「聞き上手」じゃなかったっていう思い込みが、ガラガラと崩れ落ちたんだよね。
むしろ、積極的に話すことだけがコミュニケーションじゃないんだなって。話したい人がいて、それを優しく受け止めてくれる人がいる。この場所では、その「受け止める」っていうことが、一番の役割で、一番の武器になるんだって、そう思えるようになった。弱点だと思ってたことが、まさかこんなに活きるなんて、人生って面白いもんだなって思ったよ。
スナックをやっていて、一番良かったことって聞かれたら、やっぱり「自分のことが好きになれた」ってことかな。昔は、自分のこういうところ、ダメだなあって思ってばっかりだったんだけど、この仕事を通して、自分にもちゃんと良いところがあるんだって、やっと自信が持てるようになったんだ。
特に忘れられない夜があるんだよね。ある常連のお客さんが、すごく落ち込んだ様子で来店されて。いつものように、ひたすらお話を聞いていたんだけど、その方がポツリと「〇〇(私の名前)と話してると、なんだか元気が出るよ。ありがとう」って言ってくださったの。その時、本当に胸が熱くなって、目頭がじーんとしちゃったのを覚えてる。
それまで、自分のコンプレックスだった「聞き上手じゃないかも」っていう部分が、まさか誰かの支えになるなんて、想像もしてなかった。その経験があってから、カウンターに立つのがもっと楽しくなったんだ。ただお酒を提供するだけじゃなくて、誰かの心を少しでも軽くできる場所なんだなって。
今でも、たまに「私、本当に大丈夫かな?」って不安になることはあるけど、あの夜の「ありがとう」を思い出すと、「大丈夫、私にできることはきっとある」って思えるんだ。あの時の、コンプレックスが宝物になった瞬間は、一生忘れないだろうなって思う。これからも、カウンター越しにたくさんの「ありがとう」を、そして「大丈夫だよ」っていう気持ちを、伝えていけたらいいなって思ってるよ。✨
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